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名古屋高等裁判所 昭和34年(う)17号 判決 1959年3月30日

被告人 臼井昭午 外一名

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

被告人臼井昭午の弁護人伊藤静男の論旨第二点法令違反の主張について、

本件各偽造にかかる為替手形は、額面五百万円又は五千万円という極めて高額のものであつて、該手形が虚偽のものであることは何人も容易に看破できるものであるから、かかる為替手形を用い金銭を詐取するごときは不能である。従つて、原判示第二、第五の(二)の各詐欺未遂の点は、いずれも不能犯と解すべきであるというのである。

被告人臼井昭午、同岩間保夫らが共謀のうえ、各虚偽記入し、金員騙取の用に供した原判示第一の為替手形一〇通の額面はいずれも金五千万円、同第五の二の為替手形一通の額面は金五百万円であることは、所論のとおりであるが、その額面金額が右のとおり高額であるからといつて、これらの手形により割引方の依頼を受けた相手方において、これを真正に成立したものと誤信し、その割引に応ずる可能性ないし危険性が絶無であるということはできず、現に、原判示第三の被害者石山幸司に対しては、原判示第五の(二)と同様の額面五百万円の為替手形二通により金融の便を得てやると申し詐り、原判示割引保証料として金八万円を騙取しているのであるから、たまたま、本件において、相手方が本件各為替手形になされた支払保証が虚偽であることを見抜いたため、被告人らにおいて、所期のごとく金員騙取の目的を遂げなかつたとしても、これを不能犯というは当らず、原判決が、詐欺未遂としてこれを処断したことは、まことに相当であつて、所論は独自の見解に過ぎず、採用するに由ないものである。論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判官 滝川重郎 渡辺門偉男 谷口正孝)

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